何もないところでつまづくなんて
健康長寿になるための歩き方は、なんといっても「つまづかない」こと。
「いや、私は大丈夫!」というあなた、何もないところでつまづいた経験、ありませんか?
つまづくことだけみると大したことではなさそうですが、つまづいたあとの転倒による骨折や打ち所が悪いなどによって、取り返しのつかないことになるかもしれません。
救急車で運ばれる高齢者のうち、60代は70%、70代では85%が、つまづき転倒が起因によるものです。高齢者が転んで救急搬送された結果、怪我のレベルは60.5%が軽症と診断(東京消防庁)されていますが、残り約4割は「中等症以上」で、これは「入院が必要なレベル」と深刻な状態です。また男性に限っては、大腿骨骨折したら、7年後に全員亡くなるというデータがあります。
入院してベッドで寝たきりになると、あっという間に筋肉が落ちてしまいます。寝たきりの状態で7日以上経過するだけで全身の約15%の筋肉が減少し、14日以上を経過すると下半身の筋肉は全身の20%ほど減少すると言われています。
余生を元気に過ごすためにも、転倒、つまづき、転ぶことを防ぐ必要がありますね。
つまづきによる転倒はお年寄りだけではなく、オフィスや職場、建設現場や工場での労働災害の中で最も多いともされてるのが「転倒に起因する災害」です。「私はまだ大丈夫!」ではなく「明日は我が身!」と、まずは自分ごととして捉えることが健康、安全への第一歩。
今日は「あなたの歩き方、大丈夫!?」
つまづく原因と対策別の歩き方でつまづき予防、転倒予防ができる方法を誌面レッスン風にお伝えします。
ポイントは下半身の筋肉
全身の筋肉の70%は下半身にあります。なので、まずは下半身の筋肉を衰えさせないこと!
太もも、ふくらはぎ、股関節、足首の柔軟性や背中の筋肉の衰え、足裏、足指がしっかり動くことが必要になりますが、順番にみていきましょう。
原因1 太ももの筋肉の衰え
足をあげるのに重要なのが太ももの筋肉。衰えてくることで自分のおもったように足があげられないため、つまづきの原因になります。
立った状態で、太ももをすっと上にあげてみてください。股関節より上に、膝が持ち上がりますか?
対策 太ももの筋肉を使って歩く方法
太ももの筋肉を使うには、坂道や階段。
太ももに自然と負荷がかかることで、鍛えられていきます。階段は平らなところを歩くのに比べて運動量が約2倍に。アメリカユタ大学の最新の発表によると不定期でジムに通うより毎日階段を使う方が、健康維持や減量にも効果があるということです。
ですから、日頃からは建物内や駅などで、エスカレータと階段があれば、できるだけ階段を使うようにしたいですね。
背筋を伸ばして、顔を起こして(前を向いて目線を前)歩くことで、太ももへの負荷がかかります。
下りの坂道や階段も、平らなところを歩くより運動強度が高く、ただ、下は、膝への負担もかかりやすく、下りが不安な方もいらっしゃると思いますので、無理をなさらず、上りだけでもOKです。
毎日の積み重ねで、太ももの筋肉を衰えさせないように使っていきましょう。
身体の中で一番大きな筋肉が太もも。一番大きな筋肉を鍛えることで筋肉量が効率よく増え、基礎代謝が上がり、痩せやすい身体に!
太ももについていた脂肪やセルライトも階段を登ったりすることで、筋トレになり燃焼されるので、足も引き締まりますよ!ただし、階段や坂道では、前側の太ももを使うため、やりすぎには注意。
次の大股で歩く歩き方も合わせてご覧ください。
原因2 ふくらはぎの筋肉が衰え 股関節、足首が硬くなっている
「かかと? それとも、つま先? または、かかととつま先同時?!」
小さな歩幅でペタペタ、または、家履きやサンダル、つっかけで歩くような歩き方をすると、かかととつま先同時に着地しているような感じになります。
かつては着物を着て草履や下駄を履いていました。特に女性は、大股で歩くことに慣れていないので、歩き方として小股でペタペタと歩く方も多いようです。
小さな歩幅で歩いていると、膝を持ち上げることなく、すり足のような歩き方になります。これは、ふくらはぎの筋肉を使わず歩いているということ。
足を引きずるようにように歩くと、ふくらはぎの筋肉を使わないので、ますます膝を上げる機会がなくなり、膝があがらないためにつまづきやすくなりますから気を付けたいですね。
(参考)
運動として歩く場合の適切とされている歩幅は身長の45-50%ぐらいとされています。
「あなたの身長cm × 0.45 -0.5 = あなたの歩幅」
一人ひとり、筋力や柔軟性など違いますので、あくまで目安として利用してください。
また、ご自身の歩幅を知りたいときは、10歩歩いた合計距離を歩数(10歩)で割ってみましょう。
対策 足の重心移動
ふくらはぎをしっかり使って歩くためには「かかとから着地」して歩きたいです。
かかとから着地し、足裏全体を使って地面に設置、つま先で蹴り出すという足の重心移動です。
あおり運動三点足法といって、足裏全体を使います。
また、この重心移動によりふくらはぎが「ミルキングアクション」=牛の乳搾りのように、ふくらはぎの筋肉がぎゅっと収縮してそのあと伸びる動きで、ポンプの役目をしてくれます。足元の血液を心臓に戻す循環を手伝ってくれる役割も果たしてくれます。ふくらはぎは別名「ポンプ筋」ともいわれています。
この重心移動は気にしすぎるとうまく歩けません。つま先だちとかかと立ちを繰り返す、足裏のローリング運動を1日10-20回継続することで、歩くときに、自然にかかと着地、小指親指の足運び、足裏の重心移動ができるようになりますよ。
対策 歩幅を大きくしよう1
ふくらはぎの筋肉を使って歩くためには、少し歩幅を広くして、大股で歩くこと。
「私、歩幅が小さいかも!?」と思う方は、まずは、くつ一足分先に着地するようにします。
「えー、そんなに!? 脚の長さが足りない!そんなに脚長くないし。」というあなたへ朗報をお届けします!
大股では、膝が曲がるという方は、みぞおちあたりに自分の脚の付け根があると意識して、ここをコンパスの中心のようにして、脚を動かすようにしてみてください。脚が長くなった気分で颯爽と歩いてみましょう!
また膝を曲げたときには、太ももの前側の筋肉を使います。太ももは、前側とうしろ側で機能が違います。前に進むために使うのは、実は太ももの前側ではなく、うしろ側です。
ここは、ハムストリングスといわれているる筋肉で、別名はアクセル筋とも。そのとおり、足を前に蹴り出して、身体をぐんと前に押し出してくれる作用があり、歩幅をしっかり大きく出して歩くことができます。
たとえば、運動会のかけっこで、スタートラインに立って「位置について、ヨーイ」となったときにする格好です。このときに、後ろの足を一歩後ろに下げて、蹴り出す準備をするために、ぐんと踏ん張る格好になりますね。そのときに使っているのが、後ろの太ももであるハムストリングスの筋肉です。(写真の黄色の印部分)
「ドン」となって一歩出したら、後ろ足のつま先を蹴り出して、かかとから着地しますね。そんなイメージで歩いてみてください。
上の写真のように、お尻と後ろの太ももの境目がキュッと上にあがって、ヒップアップ効果も!
ちなみに、ひざを曲げて歩くと、歩いた時の地面の衝撃をひざが吸収してしまうんですね。
ですから、かかとからしっかりと着地して、地面との衝撃をかかとと股関節でしっかりと吸収してあげることが必要です。そのためにもふくらはぎがしっかりと使えることが大切です。
また、ひざが曲がらないようにするためには、しっかりと股関節の柔軟性も大切。しゃがんだり、お相撲さんのように四股を踏むようなポーズなどでストレッチできますよ。
(大阪での公開講座の様子)
対策 歩幅を大きくしよう2
ノルディックウォーキングもおすすめです。ポールを持つことで全身の筋肉の90%が使えるようになります。特に普通に歩くときにはあまり動かさない肩甲骨、背中周り、二の腕など上半身の筋肉を使うことができます。またポールを持つことにより四つ足動物のようになるので、体重が分散し足腰への負担を軽減できます。
また、通常のウォーキングよりも無理なく、自然に歩幅を大きくすることができ、エネルギー消費量は約20%アップすることがわかっています。普通に10歩で歩いた距離をノルディックウォーキングにより7歩で歩けます。
ノルディックウォーキングは、ポールの選び方や歩くフォームのコツなど、ぜひ地域で開催している教室などに参加して実践されるのもよいのではないでしょうか。
以前にお友だちの内村先生の指導のもと、みなかみの谷川トレッキングでノルディックウォーキングを体験しました。1日目は平地でポールの使い方、身体の使い方をトレーニング。次の日は、川渡りもあるアドベンチャーコース!
身体への無理な負担なく足取り軽く歩けました。
何より空気がよくて景色がよくて。水の音、鳥の声。ゴロゴロした足元、緑のにおい。五感をフル稼働して気持ちよく歩けました。
原因3 背中の筋肉の衰えによる姿勢の悪さ(猫背)
背中の筋肉が衰えて、姿勢が悪く猫背のようになるとつまづきやすくなります。
猫背では、全身の重心が前になります。大げさに前かがみしてみるとわかるのですが、前かがみで歩こうとすると下の写真にあるように股関節の動きが制限されて脚が動かしにくくなります。
姿勢を戻してみてください。この時の方が、脚が動かしやすくありませんか?
足元をみて歩いたり、スマホなどのながら歩きでは、姿勢が悪くつまづきの原因となります。それだけではなく、まわりを感じられず危険を察知できませんから安全確保の意味でも、目線をまっすぐ歩くのがいいですね。
対策 背中の筋肉をつけて姿勢よく歩く方法
みなさんは、歩く時の手や腕はどうしてますか?
学校では行進で歩く時に腕や手を前に振るなどしていたため、健康のためとウォーキングされている方の中には、腕を前に出すようにして、歩いている方もいらっしゃいます。
少しイメージしていただきたいのですが、たとえば早そうに走る人は、腕を後ろに引いていませんか?身体の前に腕がきているとしても、それは後ろに引いた反動ですね。身体の使い方としても、手を後ろにひくから身体が前に出るんです。
ためしに、腕を前にふって歩いても肩甲骨はほとんど動きませんね。
その場で腕を後ろにふって歩いてみてください。肩甲骨が動きますね。そのことで、背中全体の筋肉が整って、自然と姿勢がよくなります。
また肩甲骨と連動している骨盤が動くので、しっかりと腕を後ろに振って歩くことで、全身運動になります。同時に肩甲骨を動かすことができ、肩こりの解消にもなります。
原因4 足指の力がない
地面を蹴る力がなくなると足が地面についたままの状態、つまり、すり足になるため、つまづきやすくなります。
裸足になる機会が少なかったり、靴が大きかったり小さかったりと靴に履かれているような状態だったりすると足指を使わないので、どんどん衰えてきます。ためしに、足指でグーチョキパーできますか?または、お行儀悪いのですが、床におちたものを足指で拾い上げられますか?
また目を閉じて、足指を誰かに触ってもらいその指が何指かわかりますか?
これらは、普段から足指までしっかり使うことができていればできることなのですが、どうも足指の感覚がにぶってきているようです。
対策 足指の力をつけて歩く方法
歩くことで解消していくためには、テンポアップして歩くこと。
速く歩くためには、足の指で強く地面を蹴る必要があるので、地面を蹴る力をつけることができます。足の指で地面を跳ね上げることで、つま先があがるので、つまづき防止になります。
足指の力をつける運動 蹲踞(そんきょ)姿勢
お相撲さんが、相撲をとる際にする格好を蹲踞(そんきょ)といいます。みなさんはこの格好、できますか?つま先を立てて、かかとの上にお尻をのせるような。
和式トイレを使うときや、ヤンキー座りも似たような体勢になりますね。
5秒ほど維持したいところですが、このポーズができない方は、普段から、後傾姿勢になっていて足指の力がない、ふくらはぎ、足首が硬くなっていて、足裏のアーチが崩れていて、立ったり歩いたりすることがしんどくなりやすかったり疲れやすい方がいます。
足裏には、自分の体重を安定して支える機能と、歩いたときの衝撃を吸収するための柔らかいクッションとしての機能があります。
この足裏の足底筋が衰えると足のアーチが落ちてきて扁平足と言われるベタっとした足裏になります。そうなると、足の指をしっかり動かすことができず、地面を蹴る力が弱くなり歩くときもペタペタとした歩き方、足をひきずるような歩き方になります。これでは、つまづきやすく、足への負担もかかるような歩き方です。
ちなみに、足裏のアーチがなくなるのは運動不足など、筋力の低下。また、サンダルや大きめの靴などで歩くこと=靴に履かれているような歩き方も原因です。かかとのある履物や、靴紐を結ぶ靴を正しく履いて、歩いたときにしっかりと足裏、足指で地面を蹴るという動きができる大切です。
足裏の足底腱膜を伸ばすのに適しているのが「蹲踞(そんきょ)」のポーズです。自分の体の重みを足指を使ってしっかり支える、踏ん張ることで、足指を鍛えることも。 足指の感覚を取り戻すには、下駄や雪駄などをご近所履きに採用するのもいいですね。
また椅子に座っているときに、足指をグーパーしてみたり、床にタオルを置いて裸足でそのタオルをつかむような動きをしたり、お風呂で足指を触ってマッサージする。女性であればペデュキュアを塗るなど、これまで意識していなかった足指を意識することからはじめてみませんか?
質問:歩くのに適しているのは、早朝?夕方?
健康な人の一日の体温変化としては、朝は低く夕方にピークを迎え、そして夜に下がっていきます。
体温が高い夕方は、一番筋肉がほぐれていて身体が動きやすい状態なので、つまづくリスクが下がります。お勤めの帰りに次の駅まで歩くなどもいいですね。ほどよく身体を使うことで、深い睡眠が得られるヒントになるかもしれません。
また、朝に歩くことは、気分よく1日をスタートさせるのに最適です。太陽の光を浴びながら、リズミカルに歩くことで、睡眠ホルモンとよばれるセロトニン(脳内にある神経伝達物質)が活性化し、精神を安定させてくれます。セロトニンが不足することで、怒りやすくなったり、気分が落ち込みやすくなったり・・・。うつ病の人は、このセロトニンが不足している傾向にあるといわれます。朝のウォーキングで、ストレスに負けない心と体をつくることができますね。
女性の方には、安全面からも朝のウォーキングがおすすめです。セロトニンは、 体内時計をリセットしてくれるので、不眠症や睡眠障害などの改善にも役立ちます。
「この時間に歩かないと意味がない。」というように決めてしまうと、今日はできない。となって、それが「やらない理由」になってしまいます。
ウォーキングは、道具がいりません。いつでもどこでもできるのがウォーキングの手軽さであり、よさでもあります。ご自身の都合や、気分良く歩けるタイミングに合わせて、まずは歩いてみまんか?
ウォーキングは脳の若返りによい
ウォーキングで脳は活性化されます。
足が伸びたり縮んだりする動きを繰り返し、全身の筋肉の70%をしめる下半身の血液を心臓へ戻してくれます。10分、20分とウォーキングしているうちに、頭がすっきりして爽快な気分になるのは、大脳の血のめぐりが良くなって脳細胞に十分な酸素が送り込まれ脳が活性化するためです。
またウォーキングで、自分にあったリズムを長時間キープすることができます。脳の栄養剤ともされるベータエンドロフィンという快楽ホルモン物質がどんどん分泌されるためです。さらに、リズムカルに足を動かすことは、ホメオスタシス(生体恒常性)が機能し、体温や睡眠等の生体リズムが整うことで、病気にもなりにくくなります。
また、ウォーキングを半年から1年続けることで、脳の記憶の領域が増えてきます。脳内に若返り物質が出てきて、認知症予防も期待できます。
私たち人間は、そもそも歩くことによって進化しました。二本足で歩くことは、脳に強烈な刺激を与えます。骨盤(仙骨)、背骨から大脳が強く刺激され発達し、言葉を話せるようになり道具を作ってつかえるようになったのです。
これまで紹介した歩き方で、正しいフォームを身につけ「歩くことを健康づくり」にしていきましょう。
まとめ
「心とからだは一緒。歩くことは前にしか行かへんやろ?せやから、前に歩くことで気持ちを前向きにしていけばいいやん。」というデューク更家氏の言葉に気持ちがとっても軽くなりました。私は、心がしんどいときに、心のことばかり勉強し、いい言葉なんかを目につくところに貼ってみたり、本を読んでみたり。それが違ってたんだね。
「心がしどいときは、体を動かす。体がしんどい時は、休む。」
今日お伝えした「歩き方=歩くフォーム」でウォーキングすることで、あなたもみるみるうちに「ヒップアップ」し、あなたの後ろ姿がどんどん若々しくなります。
ぜひ実践してみてくださいね。
全国で一万人を超が受講した「参加型!健康エンターテイメント講演」
心とカラダの健康についての講話に実践を交えながらの参加型の講演スタイル。楽しくてタメになり、笑いで会場が一体となる講演です。 プロフィール
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