100円のセレンディピティ　(デューク更家師匠との出会い）

[今朝のニュース]１カ月に本を１冊も読まない人は６割を超える――。 文化庁が１７日に発表した2023年度（国語に関する世論調査）

本は、私の中の言葉にできないモヤモヤした気持ちを言葉にちゃんとしてくれているように思う。時に世間に対して私よりも怒ってくれている。良書はある意味でストレス発散ができる。スッキリする。しみじみする。そして、思いもかけぬ出会いがある。

「　100円のセレンディピティ　」

初めてのクライアントに、私はこの話を何度しただろう。
「先生は、やっぱり何かスポーツとかされてたんですか？」
「いえ、吹奏楽部でしたから文化系です。」
「へぇー意外。てっきり体育大学とか出てはる印象でした。そしたら、なんで今の仕事してはるんですか？」

新卒でウツになった。会社を辞めたからといって良くなる兆しはみられず、でも、このしんどい状態からなんとか抜け出したくて仕方がなかった。その頃、時間だけはあったので、積読された本を開いてみた。「１カ月３０冊本を読めば人生が好転する」ような内容が書かれてあった。

頭の中で暗算する。（ちょっとお金キツイなぁ）

ベランダの向こうには雨が降りそうな灰色の雲があった。自転車を走らせた。行き先は、両国の駅の近くにあるブックオフ。100円の本を３０冊、手当たり次第選んでみた。これは違うかなと思いながらも、息抜きも必要だと１冊だけダイエット本も入れておいた。段ボールに入レテもらった本を抱え、自転車の後ろのかごに載せた。空を見上げると、雲が重そうにな色をしていた。ちょっとふらつきながら、急いで帰った。

さっそく開いたのは、ダイエット本だった。※
これを選んだのは、気軽に読めそうだと思ったからだ。表紙写真には、水着の帽子みたいなん被ってピタピタパンツ履いたスラリとした男の人。

（やっぱり違ったかも。100円だし、まぁいいか）

パラパラめくると手を上げたり、横に広げたりして歩いている奇妙な写真が載っている。

（なんか変な動き。こんなんで歩けるんかいな）

ページの最初にはウォーキングを始めたきっかけが書かれてあった。著者のお母さんが医者から「健康のためにウォーキングを」と勧められたものの、そのウォーキングの最中に転倒し、そこから寝たきりになった。その後、あっという間に亡くなったのだと。著者は「健康のために歩いたのに、なんで歩いて早よ死んでまうんや」と、健康のためのウォーキングを研究し、たどり着いたメソッドを広めることに使命を感じていた。この人は本気なんだと思った。

ページをめくっていくと、目に留まった言葉があった。そこには、心と体の健康について書かれてあった。

心がしんどい時に、本とか読んで勉強したらあかんで。
心がしんどい時は、からだを動かせばいい。

読み流しかけたが、「あれ？　どういうこと？！」何度読み返した。
「え？！えぇえー、そうなん。てか、まんま逆やってるやん。間違ってるやん、私。ってか、なんなん、わたしって、からだ動かしてなかったんが悪かっただけってこと？！」口から息が漏れた。口角と頬に筋肉を感じた。

ウツになったのは、自分のせいだと自分を責めたのも、親のせいにしたのも、会社のせいにしたのも全部勘違いだったのかもしれないと思えてきた。

その後、私はこの水着の帽子のスパッツの格好をした人物、デューク更家に弟子入りするとになった。ウツだった頃、人前に立つなんてとんでもないことだった。人の目を見ることができなかった。人と目を合わすこともできなかったのに、今マイクを持って人前に立つ仕事をして、２０年になる。

デューク更家氏がウォーキングを始めたきっかけや、私が弟子入りしたきっかけなどをつらつらと書いております。→こちら

はじめての講習会　デュークの左隣が２０年前の私

※デューク更家著『1m　ウォーキングダイエット』
私の手元にある本には、ビニールのカバーをかけているが劣化してヨレヨレ。カバーを剥がすと本の紙が捲れそうなので、そのままにしてある。私の手元に届いてから20年以上の月日が流れた。表紙を開くと、はじめて講習会に参加した日にボールペンで書いてもらったサインがある。